奈良市 不退寺の鬼瓦

不退寺(ふたいじ)
「南都花の古寺」といわれるこの寺は、一条高校の近くにあります。仁明天皇の勅願で809(大同4)年、在原業平が建立、ここに住みました。はじめは萱葺きで「萱の御所」と呼ばれました。衆生済度のために「法輪を転じて退かず」として「不退転法輪寺」と号したそうです。

南門は鎌倉末期の四脚門で室町・桃山様式の先駆とされ、重文です。
しかし、私が特にこの寺を選んだのは、鎌倉初期の建築と思われる本堂(重文)に角が1本だけの鬼面文鬼瓦があるからです。

入山者に渡されるリーフレットには「いまなお美しく清掃されたその清々しさは、業平朝臣伝承の象徴ともいえる」とありますが、どうしてどうして、本堂の周りは草も木の枝も伸び放題で、やっと見つけた角1本鬼を撮影するのに苦労しました。角が1本だけの鬼は、本堂南東の2の鬼だけです。

住職にいつの時代の鬼瓦なのかお聞きしましたが、角1本鬼の存在には気づいていないらしく、「そんなに古いものは使っていない。鎌倉以前の瓦はない」といわれました。

日本の鬼瓦に角が生えたのは平安末期から鎌倉期にかけての時代に、大阪の四天王寺が復興された際、額の真ん中に1本の角のある平板な鬼瓦が使われたのが、最初とされています。

ここの鬼瓦は立体的ですので、もしも鎌倉期の作品ならば、鬼瓦の歴史上、貴重なものといえるでしょうが、時代を示す記録はなさそうです。

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